« わが心のSF映画 その7 スタートレックIV 故郷への長い道 | トップページ | 春を待ちわびて作る冬の料理 ボルシチ »

2009/03/12

わが心のSF映画 その8 ギャラクシー☆クエスト

Gq00

「スタートレックIV 故郷への長い道」とくれば、次に登場するのはやはり「ギャラクシー・クエスト」でしょう。これは本当にぶったまげるような傑作。スタートレックのパロディなのですが、同時にスタートレックおよびその熱狂的なファン(トレッキー)への心からのオマージュにもなっているという素晴らしいSF(?)映画です。ディーン・パリソット監督1999年ドリームワークス作品。翌2000年にはSF界でもっとも権威あるヒューゴー賞も受賞しております。

「スタートレックIV 故郷への長い道」が、「彼ら」が「現代」へとやってくる物語であるならば、「ギャラクシー・クエスト」は「彼ら」が「その世界」へと赴く物語で、その意味でこの2作は表裏の関係にあるといえるかも知れません。

Gq00_3 しかしお話は「ギャラクシー・クエスト」のほうが遙かに凝った作りになっています。「故郷への長い道」では、「スタートレック」というテレビドラマがかつてこの地球で放映されていたという事実を完全に無視していますが、「ギャラクシー・クエスト」では、この現代で(明らかにスタートレックのパロディになっている)「ギャラクシー・クエスト」を演じている俳優たちが「その世界」に出かけていくのです。


ときは現代、ところは地球。この世界では「スタートレック」なるTV番組は存在せず、そのかわりに1978年から1982年まで放送された(スタートレックそっくりの)ギャラクシー・クエストという番組がございます。それはNSEAプロテクターなる(エンタープライズそっくりの)巨大宇宙船で宇宙を駆けめぐり冒険を繰り広げる物語で、カーク船長そっくりの船長やら(スポックのパロディまるだしの)異星人ドクター・ナザレス、さらにはシガニー・ウィーバー演じるセクシーな女性乗組員グエンなどが登場いたします。

この番組、今もカルト的人気を誇っていて、熱狂的なファン=クエスタニアンがコスプレ決めて集うファン集会が頻繁に開催され、クルーを演じた俳優たちもサイン会へと駆り出されるのですが、それはここ20年もの間、彼らのほとんど唯一の収入源であり役どころであり、ひとり人気者の船長演じる脳天気なジェイソン以外は、みんなうんざりしつつも金のために顔を見せるのでありました。

そんな彼らの出演した「ギャラクシー・クエスト」を銀河の彼方で受信したのが異星人サーミアンであります。敵対的で邪悪な隣人サリスとの抗争に悩む善良で嘘という概念を持たないサーミアンは、「ギャラクシー・クエスト」を現実にあった歴史的記録であると誤解し、「ギャラクシー・クエスト」に登場する宇宙船プロテクターやらなにやらをそっくり現実に建造したうえで、「ギャラクシー・クエスト」のクルー達に戦闘指揮してもらおうと地球にやってくるわけであります。

Gqall_4 ファン集会に姿を見せる「本物」の異星人サーミアンたち。しかしコスプレしているファンと区別がつきません。



二日酔いで頭朦朧としているジェイソン、ファン集会のセットだと思い込んで一人コマンド・デッキでいい加減な戦闘指示を・・・。


しかしそれは本物の宇宙船プロテクターのコマンドデッキでありました・・・。




当然化けの皮は剥がれますね。さてこの先、どうなりますことやら・・・。





冒頭のシーンからラストにいたるまで、ストーリーが実に緻密に設計されていて、本当に見事としかいいようがありません。スタートレックのビーム転送という小道具などもデジタル移送と名前を変えて、最高に笑えるエピソードとしてうま〜く活用されておりますし、スポックならぬドクター・ラザレスの役どころも最高です。スタートレックがお嫌いでないならば、是非ともご覧いただきく、強くお勧めします。

Fan ところでこの「ギャラクシー・クエスト」、米本国では奇妙な現象を産み出しています。架空のTVシリーズであるはずの「ギャラクシー・クエスト」に対するファンが生まれ始めているんですね。アメリカのSFファンは現実とフィクションを意識的にごたまぜにして楽しもうとしているわけですから、なかなかあっぱれだと感心すべきか、よくやるよと呆れるべきか、まあ大した国の大したファン気質だとは申せましょう。





 

« わが心のSF映画 その7 スタートレックIV 故郷への長い道 | トップページ | 春を待ちわびて作る冬の料理 ボルシチ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。