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2009/01/17

大人に向けると子供だましになるという見本 マイティジャック

Okok あのー、これは映画ではないです。心に残るSFでもありません。DVDで再版になったのを知って、どんなものかと観てみたのですね、「マイティジャック 」。
「ウルトラマン」はこれより少し前ですけど、さんざん再放送されたりシリーズ化されたりして今も健在であるのに、「マイティ・ジャック」といえば、知る人ぞ知るというか、ごく限られた世代層の記憶の中にひっそりと刻まれた幻のSFテレビ番組だったのでありました。

マイティジャックは1968年に半年ほどフジテレビで放送されたTV番組で(詳しくはウィキペディアでもご覧いただくとして)、かいつまんでいうと世界征服を企む謎の秘密結社「Q」の野望を打ち砕くべく、日本で結成された正義の民間組織「マイティ・ジャック」の11人が、空飛ぶ無敵戦艦MJ号に乗り込んで死闘を繰り広げるという物語で、番組企画の実現に血道を上げていたのがウルトラマンで名を馳せた円谷プロ、そしてその代表である円谷英二氏でした。

考えてみれば、ウルトラマンの設定ははっきりいってメチャクチャです。巨大怪獣が宇宙から襲ってくるのはまあ許せるとしても、それを迎え撃つウルトラマンたるウルトラ星人(?)ですか、あれは一体何でしょうね。M78星雲が生まれ故郷であるなどといってみても、では故郷の星々でウルトラマンとその家族がどういった生活をしているかなど、想像だにできないほど奇妙きてれつな設定だったのでした。

あんな訳のわからない理屈のとおらない設定はいやだ、サンダーバードのような辻褄のあったSF番組を作りたい。きっとそう円谷英二氏は考えたわけです。その円谷氏は1901年生まれ。日露戦争を3歳で、第一次大戦を10代で、そして太平洋戦争は40代で経験している彼が夢に描く最強の兵器は戦艦でした。

もはや戦艦は空からの攻撃の前には無力であることが第二次大戦で証明されていましたが、そこには戦艦が空を飛べないところに根本的な問題があるわけです。戦艦が空を飛べればなんの問題もありません。それこそ地上最強の武器になるに違いありません。

Okok2_2 というわけで、日本のSF映画界では、強烈な敗戦コンプレックスに裏打ちされた、世にも奇妙な「空飛ぶ戦艦もの」の系譜が生まれます。その終着点が「宇宙戦艦ヤマト」ですが、第1号となったのは1964年「海底軍艦」で、ここで初めて空とぶ万能戦艦「轟天号」が登場。その「海底軍艦」で特撮監督を務めたのが円谷英二その人でありました。

鬼畜米英に対する怨念の化身である空飛ぶ巨大戦艦を、MJ号として見事蘇らせることに成功した円谷英二氏ですが、彼のマイティジャックに賭ける意気込みたるや凄まじいものがあって、それはMJ号の特撮シーンにもよく現れております。MJ号は海底基地から発進しますが、ドックに大量の海水が注入されていく発進シーンや、水上に浮上してからジェットエンジン全開!で水飛沫を蹴立てて大空へと飛び立っていく離水シーン、そして空から海中へと突入するシーンは、それまで日本のテレビや映画では見たこともないようなハイスピード映像で、当時の基準からすればド迫力。

若き富田勲による勇壮なテーマ音楽も、「ウルトラマン」とは一線を画す素晴らしいできばえです。リアルタイムで「マイティジャック」を観た世代なら、MJ号の勇姿やあのテーマ音楽が強く記憶に残っているに違いありません。

ところがなぜか、大人向け1時間枠でスタートした「マイティジャック」は、わずか13回で子供向けへと路線変更して30分枠へと縮小され、結局半年ほどで打ち切りとなったのでありました。ウルトラマンやらウルトラセブンの話はよく聞きますが、誰も「マイティジャック」のことなど見向きもしないまま40数年が過ぎ去り、そして遂にDVDが再発売されたのであります。

これはもう見るっきゃないでしょう。で、3千数百円出して新品DVDをアマゾンで購入したわけです。で、観たわけです。しかし・・・

はっきりいって観てられませんでした。ストーリーがめちゃくちゃ、設定もめちゃくちゃ、なにもかもめちゃくちゃ。これならウルトラマンの設定のほうがまだマシだなと思いました。なまじ大人向けにようとしたために、逆に誰も観る人のいない壊滅的な物語になってしまったというのが、「マイティジャック」の真実でした。日本特撮プロダクション業界の悲劇性が結晶したのが「マイティジャック」だったのだといえるかもしれません。特撮からアニメへと軸足を移していく日本映画界の変遷を辿れば、きっと素晴らしくも、どこかもの悲しい物語になるのではないでしょうか。

ところで「マイティジャック」の主題歌にはところどころ英語の歌詞がでてきます。”青い海に映える影”に続いて、いきなり"Oh, it's the Mighty Jack!"とくるわけです。それが英語だとは夢にも思わず、あれはいったい何てイッテンダロナーと首を捻り続けた小学生は少なくないと思うのですね。当時ワタクシがどう聞いていたかは、ほとんど空耳アワーの世界ですのであまり申し上げたくありませんが、「もういいかマイティジャック?」 ん? なにがもういいんだろ、などと(笑)。

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