わが心のSF映画その3 マタンゴ
今はどんどん旧作がDVD化されているので驚くけど、一瞬DVD化されてすぐまた絶版になり、幻の傑作SF映画(笑)の座を取り戻したのが東宝1963年の「マタンゴ
」である。
これはさすがにワタクシは封切りでは、というか映画館では観ていません。1970年代にテレビで観たわけである。「マタンゴ
」はストーリーからすると怪奇映画に分類されるべきなのだが、しかしその制作スタッフは原案星新一&福島正実、監督本多猪四郎、特技監督円谷英二という豪華絢爛たる顔ぶれで、しかもSF色の強い面々ばかり。映画全体のテイストも、んーなんというかな、「ウルトラQ」的な感じがあって、ワタクシとしてはやはり心に残る「SF」映画なわけです。
それでそのお話はというと、女優だのボンボンだのといった浮かれた連中7人がヨット遊びに出かけます。すると映画ですから当然嵐になって、マストは折れて何日も漂流し、遂に不気味な南海の孤島に漂着。
その島の岸辺には何年何十年も前に遭難したと思われる大型船が打ち上げられていて、中を捜索するも人影はなく、なぜか船室という船室の鏡がすべて取り外されているのであった(怖)。
他になす術もない7人は船を根拠地に暮らすことになるが、やがて食糧が尽きてくる。島には食糧になりそうなものはほとんどなく、ただ不気味なキノコばかりがそこいら中に生えているわけですね。毒キノコっぽいけど、あのキノコは食べられるのだろうか? そこから恐怖の物語が佳境に入るのでありました。
予告編でもかなりネタバレになっているけど、一つ面白いのは物語が東京に戻って終わるところである。いかにも才気煥発な若者たちが捻り出した恐怖の(笑)結末で、これはなるほどと唸ってもよいかなと思いますね。
ワタクシも最近まで知らなかったのだが、実はこの映画には原作がある。海洋怪奇小説の大家W・H・ホジスン1907年の傑作「夜の声
(The Voice in the Night)」がそれで、文庫なら20ページに満たない短編だが、読んでみると「マタンゴ」のモチーフのほとんどすべてがカバーされているのには驚いた。
このまま終わらせるのは惜しいと感じさせる短編であるのは事実で、これを映画にしようという着想にも才気溢れる若者らしさを感じさせる。映画「マタンゴ」最大の功労者は、やはり「夜の声」の映画化を思い立った星新一と福島正実でありましょうね。
ところで私の「マタンゴ」に対する強烈な印象は(何回か繰り返し放映された)テレビ版によるものだが、さてそれではと改めてDVDノーカット版を観てみると、意外にもあまり面白くないのですね(汗)。話が全体に冗長でダレているのである。
面白かった順番に並べると、やはり予告編(笑える)、テレビ放映用カット版(怖い)、そして正式ノーカット版(長すぎ)という順になりましょうか。幻の名作SFは、懐かしい思い出にとどめて観直さないほうがいいこともあるという見本のような映画でありました(涙)。
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