おいコラ 『青6』初版本だぞ、ブックオフ
最近あまりにもガラクタ本が多くなり過ぎたので、思い切って大量に処分した。何冊になるのか皆目見当もつかなかったが、今はブックオフの宅本便という便利なサービスがあり、段ボールに箱詰めしてウェブから申し込んで待っていると、日通がタダで引き取りに来てくれて、後日引き取り代金を銀行口座に振り込んでくれるのだという。
で、処分した分量はというと、ダンボール15箱分となった(汗)。こういうときは何でもかんでも処分してしまうという強烈なモーメンタムがついてしまうもので、思い切って処分したものの中にはマンガもかなりある。『AKIRA』の大判全5冊も『風の谷のナウシカ』もボックス入りの『天才バカボン』も全部箱詰めしてしまった。
で、後日振り込まれた代金はというと537冊分14,069円で、222冊には値段がつかなかったということだった。つまり合計759冊が1万4千円で引き取られていったのだ。
ブックオフに売却したのはこれが初めてではないから、あそこの買い取りレートは大体分かっていた。ブックオフでは本の内容や希少価値等は一切無視して、本の程度が新品同様なら100円、痛んでいれば50円、ひどいものは10円といった具合に買い取り価格を決めるのである。だから段ボール15箱もあっても、そうとう買い叩かれることは覚悟のうえだった。ことによると1万円に届かないのではないかとも思っていたが、1万4千円になったのだから、とりあえずよしとしようか。
しかしちょっと待てよとも思うわけなのですね。値段がつかない222冊というのは売り物にならないということだろうからいいとしても、537冊で14,069円といういうことは1冊平均26円という計算になる。26円ですよ26円。
ブックオフでは新品同様の古書が500円前後で売られている。これらの仕入れ価格はどんなに高くても100円であるから、ブックオフは仕入れ値のほぼ5倍の値段で古書を売っているのである。
新刊書の場合、販売価格を100とするとその売り上げ配分比率は出版社70(著者印税分含む)、取次10、書店20というのが相場である。つまり80円で仕入れたものを100円で売るのが書店という商売なのだが、ブックオフは80円で仕入れて400円で売るという商売をしているのだ。
一般書店は再販制度によって売れ残りは自由に返品できるのだからブックオフとは同列に語れないという理屈はわかる。それにしても売値が仕入れ値の5倍というぼろい商いをやっている業界はそうはないだろう。おいコラ、儲けすぎじゃないのかブックオフ。
その昔、古書と稀覯本はほぼ同等の意味合いを持っていた。新刊書では手に入らない書物が古本として流通し、その値段は希少価値または文化的価値によって決まった。仕入れと値付けが古書店の生命線であり、店主の腕の見せ所だったわけである。
ところがブックオフの場合、書棚に並んでいる書物の多くは新刊書として一般書店で買えるもので、客の多くは話題の新刊ベストセラーなどを安く購入するためにブックオフを訪れる。そしてブックオフのサイクルに入った書物は、回遊魚のように客とブックオフの間をぐるぐると何回も往復して、ただブックオフばかりが潤うのである。
いったいブックオフは新刊書の売れ行きをどれほど減少させていることだろうか。ブックオフは古き良き古書店ではない。著者および出版社の正当な権利を侵害して暴利を貪り、結果として出版不況に一躍買っている活字文化を脅かすガン細胞のような古書店なのではないか。
このたびワタクシが手放さずに残したマンガの一つに小沢さとる『青の6号』初版本3巻セットがある。これは恐らくワタクシが所有しているマンガのなかではもっとも希少価値が高いもので、何年か前に3巻8000円の値札が付いているのを見たことがある。このようなマンガや書物をブックオフに出す人はいないと思うが、間違ってまたは気付かずに、あるいは遺品整理の一環として出してしまうこともあるに違いない。
送られてきた段ボール箱に痛んだ『青の6号』初版本が入っていたら、一体どうなるのだろう。損傷がひどく値段が付かないからと廃棄されるのだろうか。それとも10円で買い取ってこっそり高値で店頭に並べるのだろうか。
どちらに転んでみても、『青の6号』と活字・出版文化にとっていいことではないと思うのだ。私はブックオフのようなビジネスには、そろそろ法的規制が必要なのではないかと思う。
■青の6号
『サブマリン707』など潜水艦マンガが得意な小沢さとる1967年の傑作(と呼んでもいいでしょ)。海の国連軍みたいな国際組織「青」に所属する各国の潜水艦が世界征服を企む謎の秘密結社マックスと闘う。
日本からの潜水艦が青の6号で、ポンコツながら伊賀艦長以下情熱溢れる乗組員揃いで、潜水艦の性能を超える活躍を見せる。
「青」の本局は大平洋中心付近の海底にあって、それを自律型人工知能ロボット「ノボ」が護衛していたり、青の6号からはシービュー号のフライング・サブみたいな小型原子力潜行艇フリッパー号が出撃したりと、かなりSFチックな設定だったが、伊賀艦長は第二次大戦中には伊号潜水艦の乗組員で、マックスの秘密兵器に潜水艦として改修された戦艦大和が登場するなど1967年にはまだ大平洋戦争の残像がいたるところに残っていたことをうかがわせる。
この点について小沢は、それが読者の要望のためだったとして「未来にとびこみきれなかったことは作者として残念に思われてなりません」とカバー折り返しに書いているが、青6の「ヤマトワンダー」がなければ、ひょっとすると『宇宙戦艦ヤマト』も生まれなかったかもしれない。それにしても昔のマンガは話がコンパクトでよかった。『沈黙の艦隊』なんか全19巻だものね。
全然知らなかったけど1999年に復刻版
が出ていた。もう品切れになっているけど。
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